犬の胃捻転拡張症候群の病態②「播種性血管内凝固(DIC)」について
2013年12月29日
胃捻転拡張症候群の病態②「播種性血管内凝固(DIC)」について
前回のブログはこちら「犬の胃捻転拡張症候群(いねんてんかくちょうしょうこうぐん)の原因と病態」
<病態②>
胃が拡張し、捻転する事により→大きな血管(後大静脈と門脈)が圧迫される→体を巡る血液量が減る→各臓器がダメージを受ける→エンドトキシンの発生
各臓器とは・・・肝臓、腎臓、心臓、胃、脾臓、小腸、膵臓など。
胃への血管がねじりの影響を受けると、脾臓に血液が滞る→うっ血、血栓形成→壊死します。
上記の一連の流れは・・・(ここまでよく見ると前回と同じようでちょこっと違います。)
「血行の滞り」「低酸素症」「アシドーシス」「エンドトキシンの発生」
上記の四つは「播種性血管内凝固(DIC)」を引き起こす可能性があります。
「播種性血管内凝固(DIC)」とは・・・
止血のための凝固反応が体内の全く関係ないところで無秩序に発生します。
凝固反応が起こるということは、血管内で小さな血の塊が無数にできます。
無数の小さな血の塊(微小血栓)は全身に巡り各臓器に入っていき、臓器の血管詰まってしまいます。
臓器の血管が詰まると臓器に血液が虚血状態に。
そして多臓器不全になり死亡します。
DICになってからの治療は遅いと言われています。そうなる前に手を打つこと治療の大前提となっています。
胃捻転拡張症候群は言葉からは単純な病気に見えますが、その影響は実は計り知れない負の連鎖のスタートであると言う事を理解していただきたいと思います。
ですので、「拡張・捻転した胃」を一刻も早く元に戻す必要になります。
しかし、一度「拡張・捻転した胃」を戻すことは、止まった血液が再び流れる事になります。
再灌流といいますが、血流が止まっていたときに各臓器で発生してしまった「良くない物」が全身に再灌流してしまいます・・・
これを「再灌流障害」と言います。
次回は「胃捻転拡張症候群の再灌流障害」についてです。
画像は手術時のものです。拡張した胃を小さくし、捻転再発防止のために固定しました。
夜間緊急、日曜祝日も診察対応。日進市の動物病院。アニウェル犬と猫の病院の渡邉でした。
<参考文献>
Glickman LT et al.: A prospective study of survival and recurrence following the acute gastric dilatation-volvulus syndrome in 136 dogs, J Am aNIM hOSP aSSOC 34:253, 1998.
Tams TR:胃の疾患,胃排泄遅延と胃運動障害,小動物消化器疾患治療ハンドブック,廣瀬 昶他訳,第 2 版,166h168,インターズー社,東京(2006)