胃捻転拡張症候群が引き起こす再灌流障害について。
2014年01月03日
気がついたら胃捻転シリーズは年を跨いでしまいました。(๑´ڡ`๑)てへぺろ
前回のブログに関してはこちら。「犬の胃捻転拡張症候群の病態②「播種性血管内凝固(DIC)」について」
胃捻転拡張症候群が引き起こす再灌流障害について。
☆すごく簡単に示すと・・・「虚血の時に発生したいけないもの達が、虚血が解除されると体全体に運ばれたことにより起こる障害。」
<おさらい>
胃捻転拡張症候群は文字通り胃が大きくなって回転してしまう病気です。
拡張してしまうことで、後大静脈と門脈が圧迫され血流が滞ります。
回転することで、胃に繋がっている血管がねじれてしまい胃や脾臓への血流が滞ります。
<ここから本題 少し難しいです>
血液の流れが少なくなる状態を虚血といいます。各臓器では虚血により酸素が少ない状態になります。
酸素が少なくなるとATPが消費されアデニンが増加。アデニンからヒポキサンチンが作られる。虚血状態が長ければ長いほどヒポキサンチンが増加します。
処置や手術などにより虚血状態が解除され、血液が再び臓器に入ってきます。これを「再灌流」といいます。
細胞は再灌流により入ってきた酸素を使ってヒポキサンチンをキサンチンに。キサンチンを尿酸へと変化させていきます。
この変化の過程でフリーラジカルやハイドロキシラジカルといった活性酸素が作られてしまいます。
(活性酸素は細胞を傷害する働きがあります。)
また、これとは別に各臓器の虚血下では様々なサイトカインが放出され、活性化した好中球と血管内皮細胞の相互作用も発現してきます。
以前のブログでも書きました、膵臓の虚血による心筋抑制因子(MDF)の放出やエンドトキシンなども含まれます。
そして虚血状態下でこれらの細胞を障害する物質達が再灌流によって体全体に運ばれてしまい障害が起きてしまいます。
虚血時間は短ければ短いほど再灌流障害の影響も小さくなります。
一刻も早く治療が必要な理由が分かっていただけたと思います。
次回は再灌流障害を抑えることができるかもしれないラザロイドという物質について。
夜間緊急、日曜祝日も診察対応。日進市の動物病院。アニウェル犬と猫の病院の渡邉でした。
<参考文献>
Maureen ,McMichael. et al. J Vet Emerg Crit Care 14[4]:231-241 Dec’04 State-of-the Art Review 117 Refs
“虚血再灌流障害” . 日本緊急医学会 . http://www.jaam.jp/html/dictionary/dictionary/word/0903.htm, (参照 2013-12-30)