犬猫の防水スプレー中毒の診断、治療、予防について。
2016年02月17日
「犬や猫の防水スプレーによる中毒について。(診断・治療・予防)」
防水スプレーシリーズも最終回です。今回は診断・治療・予防についてです。
少し専門的ですので予防だけでも目を通していただけると良いと思います。
今までのブログも参照願います。
本日3日は終日休診。(犬猫の防水スプレー中毒の症状、原因等)
本日20日は終日休診です。(犬猫の防水スプレー中毒について)
<診断>
来院時の呼吸状態と胸部レントゲン検査から呼吸器疾患であることは容易に察知できます。
胸部レントゲン検査では肺炎や肺水腫様の像が確認出来ます。
血液検査では犬ではCRPの上昇が見られました。猫ではSAAが同様です。
そのほかは白血球の上昇等ありますが特異的ではありませんでした。
数時間で大きく変化することもあるために酸素室での管理が賢明だと思われます。
心雑音は既往歴がない限りは聴取できません。
診断には「防水スプレー」というキーワードを引き出す事が大切です。
よって詳細な問診が必要だと思われます。(飼い主は防水スプレーで中毒が起こると思っていない。)
数時間で状態の急激な悪化が見られることもありました。
<治療>
対処療法が主となります。なぜならば、フッ素樹脂やシリコン樹脂に関する解毒剤は無いからです。
虚脱した肺胞が回復するのを待つしかない状況です。
酸素室で酸素を補い、症状に合せた治療を施していきます。
予後は吸引した量や暴露された時間に左右されます。
通常来院時には状態が悪いことが多く、症状の悪化が治療の効果を上まってしまう場合もあります。
<予防>
防水スプレーを使う際の状況が非常に重要です。
例えば・・・これから出かけるのだけれど、雨の為に防水の必要がある。あるいはスノボに行く予定等。
思い出したかのように防水スプレーを使用する場合、靴だったら玄関。衣服や鞄であれば屋内で使用をする方も多いと思います。
この場合スプレーの粒子の濃度が一定の範囲内で急激に高くなります。
またスプレー粒子は噴霧すると空気中に拡散されますが、やがてゆっくりと床面に落ちてきます。
つまり、体高が低い動物はより濃度の濃くなったスプレー粒子を吸引する事になります。
(これはたばこの煙などの受動喫煙でも同じ事が言えます。)
寒くても防水スプレーは外で使用する。
これが一番の予防方法です。
夜間緊急、日曜祝日も診察対応。日進市の動物病院。アニウェル犬と猫の病院の渡邉でした。
<参考文献・HP>
・厚生労働省 「防水スプレー安全確保マニュアル作成の手引き(概要)」
http://www1.mhlw.go.jp/houdou/1004/h0420-2_13.html
・公益財団法人 日本中毒センター 保健師・薬剤師・看護師向け中毒情報 「防水スプレー」
http://www.j-poison-ic.or.jp/ippan/M70247_0101_2.pdf
・Brian C Young, Adam M Strom, Jennifer E Prittie, Linda J Barton “Toxic pneumonitis caused by inhalation of hydrocarbon waterproofing spray in two dogs” J Am Vet Med Assoc. July 2007;231(1):74-8.
☆最後の文献は炭化水素(フッ素樹脂やシリコンを溶かすための溶剤で(ヘプタンやヘキサン))についての中毒に関しての物です。