重度の歯石除去・抜歯と痛みの管理(ペインコントロール)
2012年03月05日
今回のケースは以前の歯石除去とは異なり症状が重度でした。
これくらいになりますと、歯石除去だけではなく、複数の抜歯や粘膜フラップも行う必要があります。
処置を迅速に行うことも大切ですが、その後の痛みを適切に管理することにより治癒を促すことができます。
ワンちゃんの状態は・・・
下顎リンパ節が左右共に腫れ上がっていました。また絶えずよだれが出てしまう状況で痛みや違和感もかなりありそうでした。
下唇もよだれが出ている方はただれて腫れている状態でした。
レントゲンで顎の骨と歯根の状況を確認しましたが、顎の骨はしっかりしていたのが幸いです。
ただ抜くべき歯は多くなりそうです。術前検査を済ませた後に麻酔をかけました。
まず歯周ポケットを確認しましたが見た目より重度でした。
スケーリングにて歯表面の歯石を除去し、歯肉と歯の間の歯石は用手にて除去(ルートプレーニング)。
この時点で歯根近くまで歯茎が下がっている箇所が幾つか見られました。
次に抜歯に取りかかります。ぐらぐらな歯や歯石が歯の根本まで侵襲している物は抜歯の対象です。
抜歯本数が多くなることが予想されたので局所麻酔として神経ブロックを行いました。
結局抜歯は全部で16本に。個々の抜歯窩(抜歯した後の穴)の搔爬後に抗生剤を挿入し抜歯窩を閉じました。
そのために作成したフラップは四カ所でした。
ポリッシングを行い(準備研磨の後に仕上げ研磨という二段階です。)その後歯周ポケットに薬剤を塗布し術式終了となりました。
文章で書くとあっけないのですが、二時間半くらいかかっています。
幸いにも麻酔からの覚醒後は神経ブロックのおかげで痛みを訴えること無く、飼い主様を見ると元気な顔をして帰宅されました。
手術後の治癒過程において痛みのコントロール(ペインコントロール)はとても重要です。
術後の痛みを放っておくとストレスホルモンの分泌の影響による回復の遅延が心配です。
激しい痛みは術部における筋肉の緊張や血管収縮を引き起こす為に血行が悪くなり傷の治癒が遅れます。
当院では痛みの負担をできるだけ減らすべく複数の薬剤によるのペインコントロールを積極的に努めています。
夜間緊急、日曜祝日も診察対応。日進市の動物病院。アニウェル犬と猫の病院の渡邉でした。