犬が何回も吐く。食べている途中でも吐く。巨大食道症(食道拡張症)④管理編
2013年11月30日
犬が何回も吐く。食べている途中でも吐く。巨大食道症(食道拡張症)④管理編です。
前回の治療編はこちら「犬が何回も吐く。食べている途中でも吐く。巨大食道症(食道拡張症)③治療編」
巨大食道症(食道拡張症)の食餌管理は非常に大切な事です。
なぜならば、適切な食餌管理を行わないと胃に入る前に食道の拡張した部位に貯まってしまい、最終的に胃に入ることはなく口から戻されてしまいます。(これを吐出といいます。嘔吐は一度胃の中に入った物が口から出てくることです。)
つまり食べたのに出してしまうので体に必要な栄養分が補給されないことになります。
この疾患にかかると、体重が落ちて痩せていくことが多いです。
また、食べたものを吐き出す時にうまく吐き出せず誤って気管に入ってしまうと食べ物が肺に入り込んでしまい「誤嚥性肺炎」になってしまいます。
残念な事に「誤嚥性肺炎」を起こしてしまい亡くなってしまうワンちゃんが非常に多くみられます。
怖いことばかり書いてしまっていますが、本題に。
<巨大食道症の食餌管理>
食道の運動機能が低下した状態で胃の中まで食餌を入れるために、「重力を利用した給餌」を行います。
① 起立位で食べさせる。あるいは、胃よりも高い場所に食餌を置き食べさせる。
② 食べさせた後はしばらく立った状態で。食べたものが胃内に入るまで15分位待ちましょう。
食事内容、固さ、大きさはそれぞれ適したものでよい。必ずしも液体状である必要ななく、症状により何が適切かを決める。
☆これができない、あるいは症状の改善がみられない場合は胃に直接チューブを付けて(胃瘻チューブ)食餌を口からではなく、胃から与えることになります。
意外な管理の仕方と思われるかもしれませんが、食餌は毎日の事ですからとても重要な位置づけになってきます。
でも、一手間加えるだけで普通の生活が送ることが出来るのであればそれに越したことは無いと考えます。
画像は重症筋無力症のroxieというワンちゃんと食事の時に使う体を垂直に保つ道具です。
roxieは体重が30%減り、2回の安楽死を考えるほどの状況だったのですが、回復してアジリティーの大会にでるくらい元気になったそうです。
夜間緊急、日曜祝日も診察対応。日進市の動物病院。アニウェル犬と猫の病院の渡邉でした。
<参考文献>
Tams TR:小動物消化器疾患治療ハンドブック,廣瀬 昶他訳,第 2 版,112-126,インターズー,東京(2006)
Robert W:第84回JAHA国際セミナー消化器病学ハンドアウト, 4-8 ,社団法人日本動物病院福祉協会, 東京(2004)