犬の膵外分泌不全の診断と治療と管理ついて。

2014年01月26日

先日はお休みにご理解をいただきありがとうございました。

本日より通常診察ですのでご安心下さい。

前回は犬の膵外分泌不全の病態と原因でしたが、今回は診断と治療と管理について説明します。

前回のブログはこちら犬の膵外分泌不全の病態と原因ついて。(臨時休診のお知らせ。)

<診断>

・血液検査で他の基礎疾患が無いかを確認します。

・コレステロール値が低い事が多々見られます。

・ALT上昇(軽度)が見られることもあります。

(消化管粘膜のバリアが機能を失うことにより、様々な異物が血流から門脈を介し肝臓へと運ばれる事による。)

・糞便検査では寄生虫疾患の可能性を否定します。

☆特異性が高い検査はTLIの測定(Trypsin-like immunoreactivity :トリプシン様免疫活性)です。

この検査が出来る前は、フィルム消化試験や特別な染色液で糞便中の脂肪を染色することもありましたが、条件や煩雑さ、特異性の低さから行われることはほとんど無いと思います。

<治療>

・検査結果で膵外分泌不全が確定したら、膵臓の酵素を補うための薬(消化酵素製剤)を食餌毎に服用する事で栄養素の消化吸収が正常化されます。数週間もすると体重や被毛の状態、便の状態も良くなり安定します。

・治療がうまくいかない場合もあるようです。(約10%が治療に反応しないようです。)

・お薬の量自体が足りない場合→増やしてみる。

・胃酸過多でお薬の効果が発揮できない場合があるようです→胃酸を減らすお薬の投与も併用する。

(お薬に含まれているリパーゼが酸による影響を受けやすい酵素だから。)

・失われたビタミンB12の補給も必要になります。

(犬や猫はビタミンB12の貯蔵能が低い。また罹患している時に異常増殖した腸内細菌層での消費、腸からの吸収を促進するための膵臓由来の酵素自体の減少により体内のビタミンB12が枯渇する。)

<管理>

・内服は生涯続けなければなりません。

・ご飯を消化・吸収できない事がこの病気の原点ですので、ご飯も消化吸収の良い物を選択すべきですが、これに関しては議論がされている最中です。

・足りていない酵素が満たされたのであれば普通食でも構わないという報告もあります。

・食餌における脂肪の量はそれほど大切ではなく、むしろ脂肪の消化性が大切であることが示唆されています。


画像は当院で治療に用いている消化酵素製剤「パンクレアチン」です。

夜間緊急、日曜祝日も診察対応。日進市の動物病院。アニウェル犬と猫の病院の渡邉でした。

当院で治療に用いている消化酵素製剤「パンクレアチン」

当院で治療に用いている消化酵素製剤「パンクレアチン」