概要
犬の血管肉腫とは、血管内皮に由来する悪性腫瘍です。発生部位として脾臓が最も多いと言われています。(脾臓に発生する悪性腫瘍の1/2が血管肉腫です。)しかし、どの臓器にも発生します。右心耳や皮膚、肝臓、腎臓、骨などは発生が時折見られる臓器です。また、脾臓に発生した場合、高率に肝臓に転移します。肝臓の他、肺、体網も転移が起こりやすい臓器です。
来院時は急に元気が無くなったり、心臓の周囲に血液が貯まってしまう心タンポナーデになっていたり、腫瘍からの出血でお腹の中が血液で満たされた状態のこともあります。
血管肉腫は「播種性血管内凝固 DIC」を起こしやすい腫瘍としても知られ、積極的な治療を早期に開始することが非常に重要です。
診断
X線検査では肺への転移や拡大した脾臓や肝臓、胸腔腹腔ない出血が確認出来ます。また超音波検査ではリアルタイムに臓器の異常や出血の具合が確認出来ます。
全身の血液検査によるDIC徴候の有無の確認も必須です。
治療
外科的切除が第一選択となります。一方で手術に耐えうることができるコンディションかどうかの判断も重要でしょう。 また、摘出に成功したとしても、後に再発及び転移が見つかることが多く、後述する化学療法の併用が推奨されます。
化学療法は手術後の肉眼では見えない腫瘍に対するアプローチです。完全に摘出できた場合でも転移率が高いこの腫瘍では化学療法の併用が推奨されています。
ドキソルビシン単独使用、VAC(ビンクリスチン・ドキソルビシン・シクロホスファミド)、AC(ドキソルビシン・シクロホスファミド)を用いた多剤併用療法などが報告されています。どの治療法も効果にはそれほど大きな差はないとされています。
その他、低用量シクロホスファミドの経口投与や脾臓血管肉腫の手術後のサリドマイド投与などが報告されていますが、副反応や薬剤の取扱いが難しい事が問題となっています。